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結膜弛緩症

結膜弛緩症という眼疾患があります。一般の方にはまだまだなじみのないものかもしれませんが、近年注目を集めており、とくにドライアイと関連が深いことから重要視されるようになってきました。結膜弛緩症はその名の通り、結膜が弛緩した状態です。眼表面のうち白目の部分を結膜といい、眼球壁(強膜)を覆っている半透明の膜です。結膜には適度なゆるみがあり、上下左右などの眼球運動に耐えられるようになっています。このゆるみが平均より強い状態を結膜弛緩症といいます。

ゆるんだ結膜は下まぶたに沿って存在し、程度が強いときは黒目(角膜)へ乗り上がっていることもあります(写真1)。結膜弛緩症は写真2のような染色液とブルーライトを用いると、よりはっきりその存在を見ることができます。

 

結膜弛緩症の原因はよくわかっていませんが、加齢とともに増える傾向にあります。眼球運動や瞬きにともなって、弛緩結膜(余剰結膜ともいえます)が過剰に動くため、異物感を生じます。強い痛みではなく、ごろごろする、しょぼしょぼする、何か挟まっている感じがするなど、不快感に近いような症状となります。写真にみられるように、弛緩結膜がひだ(あるいは皺)を形成する(カーテンのドレープを思い浮かべてください)ために、そのひだの間に涙がたまり、挙げ句、外にこぼれ落ちるため、流涙を生じます。

結膜弛緩症の患者さんはしばしば「涙がよく出る」「涙がこぼれる」などと訴えます。また、弛緩結膜がよく動くことから、結膜の毛細血管が引っ張られて、結膜下出血の原因となります(写真3)。結膜下出血を繰り返す方にはしばしば結膜弛緩症がみられます。

 

こういった症状から、結膜弛緩症はしばしば疲れ目(眼精疲労)などと診断され、見過ごされていることがあります。極端な例では「お年のせいですよ」と片付けられていることもあります。そして、眼精疲労などの点眼薬を処方されることもあります。しかしながら、結膜弛緩症は物理的に結膜が余っている状態なので、症状は点眼薬だけでは軽快することはあっても、完治は難しいのです。

また結膜弛緩症はドライアイと深い関係があります。下まぶたに沿って弛緩結膜が存在するため、そこに涙がたまってしまい、肝心な角膜(黒目の表面)に涙が行き渡らなくなり、ドライアイと同じ状態になります。写真4は、結膜弛緩症に隣接した部分に角膜のキズ(角膜上皮障害)が生じている例です。また、本当に涙の分泌量が少ないドライアイがあると、さらに眼表面に涙が行き渡らなくなるために、ドライアイの悪化につながります。

ドライアイの方は、点眼薬をむやみに使用すると点眼薬毒性が出ることがありますが、結膜弛緩症とドライアイの合併を見過ごされ、過剰な点眼薬の使用によって悪循環に陥ることがあります。このように、結膜弛緩症はまず、正しく診断してもらうことがとても大切です。

では、結膜弛緩症と診断されたら、どうすればいいでしょうか。まず、もし何らかの点眼薬を使用しているなら、診断してもらった医師や専門家に点眼薬を見直してもらうといいでしょう。その上で、治療を検討しますが、結膜弛緩症は手術でとても綺麗に治すことができます。治療はひとことで言うと、弛緩結膜を切除する、ということになります。切除というと怖く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、目の表面の下の部分だけであり、眼球の中をさわるわけではありません。

手術は局所麻酔で15分程度です。弛緩結膜を切除したあと糸で縫合しますので、術後に糸による異物感が生じますが、1週間程度でよくなります。術後の充血も1週間程度で消えます。手術後の傷跡はほとんど残らず、見た目には分からないくらいです(写真5)。当科ではいままで数十例の方に行っていますが、結膜弛緩症が再発した方はおられません。

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